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アンカー 1
【最初で最後の我が親友】
ある事をきっかけに私は全てを失い全てに裏切られた、家族にも友人にも社会にも裏切られた。今までの人生で私は誰も信用せずに生きてきた、全てを見返すために、虜にするために這い上がった。 いや...1人だけ、過去に信用した人間がいた。 私が借金取りに追われ路上で半殺しにされ野垂れ死にそうになった時だった
【最初で最後の我が親友】
1人の美しい女性に出会ったんだ。
「どうしたんですか?こんな薄汚れたところでお茶会ですか?紳士さん?」
「なんだ?見世物じゃないんだ...話しかけないでくれ。」
「はぁ?それが紳士の態度なの??まぁTPOに弁えた服装なんじゃない?」
ボロボロの服を見て彼女は皮肉を言った。
「喋りかけないでくれ...」
「はァ....まったく..世話がやけるわね... ほらついてきなさい」
そう言うと彼女は私の腕を半ば無理やり引っ張り家まで連れていってくれた
「上がっていいよ、あ、靴は脱いでね?」
「そんなことぐらい分かってるさ」
「ふふ、外暮らしの長そうなあんたに警告しただけよ」
嫌味な女だ、当時はそう思ってた。
「ほら着替えの服よ。」
「いいのか?」
「早く着なさい、まとめて洗濯するから」
彼女は優しかった、その優しさと同じくらい家は暖かく、温もりがあった。
「はい、紅茶....それで?あそこで何があったの?まるでゴロツキにボコボコにされたみたいな風貌だったけど」
また皮肉を言ってきた。
「...色々あったんだ。それにしても、よくこんな奴に対して優しくするじゃないか?もしかして...」
「何も無いわよ!...昔、おばあちゃんがね「困ってる人がいたら助けなさい」てよく言ってたからそれに従っただけよ」
驚いた、そんなことを言う人間がいるのかと少し驚いた、今までそんか助言を言う人や従った人に出会わなかったからだ
「そうか、良いおばあちゃんだな。俺はそんな奴に会ってこなかった、」
羨ましかった、家族にも、友人にも、愛人にも恵まれなかったんだ。さぞ幸せな人生を...
「ふ〜ん?大変な人生だっただね、あんた。 仕事はしてないの?あ!職無しが仕事だったからしら?」
また嫌味を言いやがった!
「嫌味な女だなぁ!」
「ふふふ」
「何がおかしい?」
「いや、なんか、昔会った人を思い出しただけよ。そうだ、自己紹介が遅れたね、私はエミリアよ」
エミリア....素敵な女性にはピッタリの名前だった。
「あ、ああ俺は...ウォッカだ。ジョージ・ウォッカ。よろしく、エミリア」
「呼び捨て?馴れ馴れしいわねぇ」
「あんまりさん付けするのは慣れないんだよ」
「通りで」
「とりあえず、お礼を言う、ありがとうエミリア。俺は直ぐに出てくよ迷惑かけたな。」
これ以上は迷惑をかけれないし、いつまた裏切られるか分からなかった私は直ぐにその場を離れようとした。 「あんた出てくってどこへ行くのよ、また路上のネズミと一緒に過ごす気?職がないんだろ?出世払いでいい から家で住みな、ジョージ。」
これを聞いた時は凄く驚いた。さすがに裏があると思って疑ってしまった。
「おいおい幾らなんでも人が良すぎるだろ? 何を隠してる?」
「なんもねぇよ!あんたなら、きっと凄い人間になると賭けただけさ、あ!まずい!もうこんな時間だ!あん たもさっさと寝なよ!」
そう言うと彼女は部屋から出ていった。 彼女には驚かされてばっかだった、あんなに人がいい人間はそうそういないだろう。 最初は彼女の事を信じ切れず邪推していたが日々彼女と過ごしていくと次第に信用するようになった。 数年の時がたっただろうか起業するといった時は全力で応援してくれた。
勉強にも付き合ってくれたし、一緒にクリスマスも過ごした、恋人ではなかったが....
お互いが信用し合う友として私達は失敗した時も辛かった時も上手くいった時も一緒に悲しみを分かち合い喜びを分かちあった
そしてさらに数年後会社設立後の冬の時だった、私は家を買い新天地に引っ越す直前に彼女に別れを告げた。 「その....あれだ....世話になったな、エミリア」
「本当に世話になっただろ?親友」
「親友?親友....」
久しぶりにそんな言葉を聞いた俺はつい動揺してしまった。
「どうした?まさか、あれだけの時間過ごして親友じゃないって?まったくあんたは友達を作ったことがない のか?これだからあんたってやつは」
「え、ああ、すまん、エミリア。久しぶり過ぎて、ちょっと意味考えてただけだ」
「意味を考えてた!?そりゃ傑作だ!ハハハハッ!」
「わかったわかった、笑うのよしてくれ、ほら俺はそろそろ行くぞ!電車に乗遅れちまう。
定期的に連絡はやる!じゃあ、元気でな!」
「そっちこそ昔みたいに路上でネズミの餌になるんじゃないよ!」
そんな会話をして私は彼女の家を後にした。
私があの事件以来初めて信用した人物だと思う。
最初の方は連絡を入れていたがお互い忙しくなり数年くらい連絡を取らなくった。
そしてしばらくたったある日久しぶりにあいつから連絡が来た
。久しぶりに話せると思い喜ぼうとしたのも束の間、彼女から病にかかったと報告された。
私はその時はひどく動揺した。 彼女曰く前代未聞の不知の病らしく近所の病院では誰も取り扱ってくれず、
大型の病院に通院するほどの病だという。 直ぐに見舞いに行ったさ、すぐだ。他の仕事を全てキャンセルして行った。 病室で見た彼女の姿は弱々しくとても衰弱していた。
「おい大丈夫か!エミリア!」
病室のベッドで寝ている彼女が言った
「あぁ、ジョージじゃないか、あたしゃ大丈夫だよ」
そう彼女は弱々しく言う、どう見てもからげんきだ
「なんで話してくれなかったんだ!」
「えぇ?そりゃあ、忙しいアンタに心配して欲しくなかったからさ....
やっと見つけた職を私のせいで棒に振って欲しくなくてさ..」
「どんな事でもお前を優先するに決まってんじゃねぇか!親友だろ!」
「ジョージ...そんな心配しなくても...」
「無理して喋んじゃねぇ!、俺が世界中から探してくる!それまで絶対死ぬんじゃねーぞ?」
私は必死だった、どうしても治したかったんだ
「いいんだよウォッカ、そこまでしなくて」
彼女は諦めかけていた
「いいやするね!お前には貸しがある、返す日が来たってことだ。俺に任せろ!親友!」
「ふふ、じゃあ任せるかね?親友」
「おう!任せとけ!我が"親友"」
そうやって私は自身の貯金や仕事のつてを生かし世界を回った、数年の歳月をかけて、
けど、けど見つからなかった。
私は全ての医療関係を回った、全てだ、だがどこもできなかった、不知の病だって、
分からないってみんな言った。 悔しかった 約束したのに 本当に悔しかった私は病室に戻り エミリアに告げた 「すまない、本当に。どこにも...見つからなかった。すまない....約束したのに...」
エミリアはかなり衰弱していた、出会った時は嫌味を言うくらい元気だった彼女は今では、とても弱々しい。 「いいのよ、ウォッカあなたはよく頑張ってくれたさ....恩なんて返さなくていいのよ。
十分....十分返してもらったさ。」
弱々しく彼女は言った
「頼むエミリア、俺に出来ることは無いか?」
「そうねぇ、なら.....一つだけあるわ。妹の子供が成長したら面倒を見てくれないかしら?」
「妹の子供?」
「えぇ、私は子供に恵まれなくてね、妹に子供ができると聞いた時はぁとても喜んださ。我が子が生まれたか のようにね...。 ふふ、きっと、あんたのところに働かせたらあんたみたいな立派な人になるわ。
だから...これが最後のお願いよ」
彼女らしい他人思いの頼み事だ、断る理由なんてものは存在しなかった。
「わかったよ、恩人で親友の頼みなら断る理由はないな。」
「あんたは優しくなったねぇ、出会った当初とは大違いさ。」
また彼女は弱々しく嫌味を言った
「嫌味が言えるならまだ元気で事だな」
「ふふ、そうかもね、ふぅ....少し疲れたから休むわ。ありがとうねジョージ、来てくれて本当にありがとう。
あんたは最高の親友だよ」
「まるで死ぬみたいな言い方をするんじゃないよ、きっと俺が治してやるだから...必ず死ぬなよ、じゃあなエ
ミリア。」
私は病室を後にした そしてその晩に彼女は亡くなったらしい 今思えばもっと話せばよかった、近況報告やら、世間話やら...本当の気持ち...やら...
11月1日の朝ある墓石の前に一人の男が立っていた
「久しぶりだなエミリア。最近は忙しくて行けなかったんだ。本当だぜ?
相変わらず美しいな、お前は
そういえばお前の約束だが、うちからオファーを送って入社させたよ。
凄く働いてくれるし有能なやつだよ、きっと俺みたいになる!。
あと、お前を蝕んでた病がな.....とうとう俺の所でで治せるようになったんだ、凄いだろ?
これで、お前みたいに辛い人間を救えるし、俺みたいに残される人間が減る。」
「社長、そろそろお時間です。」
「あぁ分かってる、先に行っててくれ間に合わせるよ。 改めて本当にすまない、助けてやれなくて 安らかに
眠ってくれ。我が親友よ。」
【最初で最後の我が親友】END
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