top of page
アンカー 1

不明なログ

　柔らかい肌を再現することを目的としたパーツは、人工的に調整された“体温”を私の手に伝えていた。その感触を感じながら普段業務で接する同僚やサイボーグに対する調子と同じく、
目の前に横たわった人型の物体に声をかけた。 　
「メンテナンスはもうすぐ終わりだ。調子はどうだい？」 　
しかし、返ってくる声はなく、代わりに傍らに並ぶ精密機器を冷却するファンの音だけが部屋に響いていた。何かを間違えたのではないかと不安に思ったが、すぐにそれは杞憂であることに気づいた。
精密機器のインジケーターがパターンのある点滅を繰り返し、接続されていたモニタに意味のある文字列が
表示されていく。内容は不満やスラングによって冗長となっていたが、要は問題ないという事を伝える文面
であり、メンテナンスの不備がないことを示していた。 　
四肢の固定を外し、身体の再起動を図る。これさえ済めば彼女の定期検査が完了する。彼女の瞳に光が灯る。起動を示すその様子の後、彼女は周囲を見渡し、瞬きを繰り返した。 　
「仕事がある。動けるか？」 　
そう問いかけると、彼女は頷きを返した。口は閉じたまま、意志の強そうな視線が私を刺すように向けられた。
台から起き上がる裸体の彼女に着替えを投げる。
着替えるその身体を横目に見ると、今では傷のない綺麗な姿だが、初めて出会った時の痛ましい姿を思い出した。あのとき破壊されていたセンサは今では大部分が新品に置き換えられていた。唯一直っていない私が手を下してしまった部分を除いて。 　
「行こうか、お嬢ちゃん(レディ)。」 　
私は彼女に声をかけたが、答えは返ってこなかった。しかし、傍らに並び立つその姿は雄弁に答えを示していた。






















​




























人の情報を勝手に覗くとは感心しないなぁ....まぁ...この情報を知った以上は、
君がどうなろうと知ったこっちゃないけどね

​前のページに戻る

bottom of page